気候変動のことを考えた溶接

輝かしい成功の多くはガレージから生まれています。元トラック運転手であったRobert Bloos Senior氏の成功もそのうちの一つです。「暖房の燃料は木材に限る」と当時から固く信じられていましたが、Bloos氏が冬の寒い日に仕事を終えて帰宅すると、アパートの部屋は常に冷え切っていました。なぜなら、1970年当時に流通していた薪ストーブで部屋を暖めるには、日中に火を起こしておく必要があったからです。そのため、もし誰も日中に家にいなければ火は起こされないままでした。これを不満に思った同氏は彼の小さな仕事場で実験を始め、自分の敷地内にある木材を燃やして化石燃料システムと同等のレベルの快適な暖房システムを作りたいと考えました。そしてそこで、薪ストーブを自動で充電できるようにしようと決心しました。多くの苦難の末、ウッドチップの自動ディスペンサーシステムが世界で初めて誕生するに至ったのです。
オイルヒーターと同様に便利で、同時にメンテナンスが簡単で環境に優しい
自動ディスペンサシステム搭載のウッドチップ暖房システムは小さなガレージで生まれました。しかし、事業は今や家族経営の企業に発展し、グンツェンハウゼンとハイデンハイムの2か所に工場を構えています。同社は従業員330名を抱える実質純生産高比率85%の企業として、30kW~900kWまでのカスタマイズ型暖房システムを生産し、世界中で販売しています。同社の信頼性が高くローメンテナンスな新しい暖房システムは現在、世界40か国以上の顧客の高い満足度を獲得し、使用されています。実際に必要な熱のみが、気候に依存しない再生可能な熱源から生成されます。そのドイツならではの高品質に信頼を寄せているのは欧州諸国や米国、カナダの顧客だけではありません。同社の製品はマレーシアやニュージーランドといった遠方の国でも使用されています。Heizomatは、ASME認定を受けた上で世界中に輸出されています。アメリカ機械学会によるこの認定は約100か国で認められた国際的な認定であり、製品が安全基準を含めたASMEコードの厳格な要件を満たしていることを保証するものです。
革新的で、環境に優しい暖房システム
長きにわたり、ウッドチップに関心を持っていたのは民間消費者と地方団体、そして農家のみでした。しかし今日では、商社や工業系企業もこの気候変動にほとんど影響を与えない、薪による暖房システムによるメリットを得ています。釘などの「不純物」が混じったウッドパレットであっても、Heizomatのシステムであれば簡単に燃やすことができます。
ゴミとして残った木材の廃棄では、その撤去だけでも多くのコストがかかります。廃材となった木材で暖房システムを運用すれば、廃棄コストだけでなく、新しい木材の調達のための費用も節約可能です。得られた灰には貴重なミネラルが含まれており、天然肥料として使用できます。つまり、木を植え、収穫し、燃やし、肥料にするというBloos家の精神に沿って、循環経済に貢献できるのです。Heizomat社では、これは親しみを込めて「ウッドチップサイクル」と呼ばれています。
Heizomat社製造部長のManuel Vorbrugg氏は次のことを強調しています。「私たちは、暖房システムのほか、収穫、薪割、輸送システムに必要なシステム部品のすべてを供給する唯一の製造業者であり、灰適用や排気ガスの浄化まで担っています。最新のイノベーションであるHeizoContコンテナシステムは、暖房サイクルシステムをコンパクトでプラグアンドプレイソリューションとして実現することができ、ウッドチップの保管と灰適用に至るまで、設置、接続、加熱まで大がかりな改造作業なしで完了します。コンテナシステムは工業系・商業系の顧客だけでなく、自治体暖房協同組合からも特に関心を寄せられています。」
溶接中も常に未来志向
技術者の不足が深刻化する一方で成長は加速していることにより、Heizomat社を含めた多くの企業で自動化ソリューションが必要とされています。今日、Heizomat社ではボイラーの溶接に当たってフロニウスのロボット溶接セルを3台使用しています。溶接セルにはPathfinderオフラインプログラミングとシミュレーションソフトウェアが搭載されています。
「自動化がなければ、有資格の溶接技能者をさらに雇用する必要がありますが、今の労働市場ではそうした人材はかなり希少となっています。そこで、私たちはロボットシステムを導入することに決めました」と、Vorbrug氏は語ります。「この点について、フロニウスは私たちを早い段階で安心させてくれました。焦点は始めから溶接が抱える課題に当てられていました。運動学はフロニウスのソリューションに基づいて設計されており、その逆ではありませんでした。現在、私たちは3台のロボット溶接セルを用いており、これにはリバーシブルポジショナーが搭載されています。これによって、私たちが本当に必要としていた、完璧な溶接シームによる高品質な溶接が可能になります。」
ウッドチップヒーターを構造するに当たり、6 mmの熱間圧延された非合金S235JR構造用鉄(それぞれ700~950kg)が、耐ガスおよび防水仕様で接合されます。要件によっては、部品の個数が300から700まで変動することもあります。
溶接エキスパートであるChristoph Stieglitz氏はこのように断言しています。「パルスマルチ制御(PMC)は鉄ボイラーの溶接にとって完璧なプロセスです。最大で80 /cm/分と、手溶接に比べ大幅に高速な溶接が可能で、底部溶込みも最適に制御されます。溶接シームは目視検査でも完璧で常に高品質です。」
PMCは進化したパルスアークプロセスで、強力で安定したアークと制御された低スパッタ液滴分離によって高い溶融速度を実現するといった特性を持ちます。公差が厳しく、厚さに大きなばらつきがある部品でも、PMCを使用すると完璧に溶接できます。また、アーク長・溶込安定装置により、制御の正確さと高度なプロセス安定性が保証され、ユニット長あたりの消費エネルギーも抑えられます。
「溶接の自動化によるメリットは明らかです」と、Vorbrugg氏は述べます。「まず、システムの設定を並行して行えるため、生産性のないダウンタイムの軽減につながっています。第二に、手溶接と比べて溶接速度が格段に上がりました。手溶接では1つのボイラーの溶接に6時間かかっていたところを、ロボットでは1時間40分だけで済むのです。そして第三に、Pathfinderのオフラインプログラミングとシミュレーションソフトウェアを用いることで、溶接ロボットのティーチング時間も大幅に短縮できます。」
Fronius Pathfinderで溶接を最適化
Pathfinderでプログラミングをオフラインで行うことの最大のメリットは、溶接シーケンスをすべてロボットシステムとは離して作成できることです。そのため、進行中の溶接作業をプログラミングのために中断する必要はもはやありません。また、考えられるエラーがあればシミュレータによって事前に検出され、それに基づいて溶接シーケンスが最適化されます。例えば、衝突、軸境界の違反、特異性は記録、可視化されます。溶接の複製、接合、グループ化、ミラーリングでも大幅な時間節約が実現します。溶接シミュレーションは、リアルタイムで、また同時にサイクル時間(溶接速度、ガスプリフロー時間、エンドクレータ充填など)を決定して自由な速度で実行可能です。もし溶接ロボットをこのシステムのみでティーチングすれば、最大で10倍もの労力を要します。
耐ガスボイラーを正確に溶接
「私たちのシステムが溶接するのは、一貫して溶接シームの中核です」と、Stieglitz氏は説明します。「これを可能にしているのは自動の溶接シーム検索機能です。これはまず溶接ワイヤを部品まで移動させ、位置と座標を記憶します。X、Y、Z座標で必要な点の測定と記録がすべて完了すると、すぐに仮想部品と比較されます。偏差がある場合、溶接パスはそれに基づいて修正されます。」
耐ガス、防水仕様のボイラーをHeizomatと同様の高品質で製造する場合、溶接シームの位置が正確であることは基本要件となります。従って、ボイラーには水圧9~11 Barでのリークテストが24時間連続で行われます。これに合格して初めて、世界トップクラスの人気を誇るウッドチップ暖房システムに設置可能となるのです。目視検査で欠陥のないシームも米国では同様に重要とされます。なぜなら、ASMEの基準では、ボイラー内部の見えない部品についても100%完璧な溶接が求められているからです。
すべてを完全に制御
HMI T21-RSシステム制御では、すべての溶接プロセスに加え、ロボット溶接セルで用いられる部品の監視と調整も可能です。例えば、ロボット、溶接電源、反転ポジショナー、ツールセンターポイント(TCP)測定、トーチ洗浄の部品の監視と調整を行えます。このうち、動学および溶接プロセスの定義、そしてリアルタイムの3Dビジュアル化を行うプログラムエディタは特に注目です。Heizomat社の溶接スペシャリストは現行のシステムの状態およびシステムの全部分をよく把握する必要があるため、モジュールと保護領域は溶接セルのそれぞれの状態に応じてすべて保護されています。制御機能には、ユーザ/プログラム管理、故障インジケーター、サイクル・部品カウンター、言語切替、システムステータス表示、電力完全管理(供給媒体)などさまざまなものがあります。
「フロニウスは私たちにとって正しいパートナーでした」と、Vorbrugg氏は結論づけます。「私たちと同じように、環境に配慮した経営が最優先事項であり、問題を課題として捉えらています。さらに、何かあればいつでもサポートを受けられます。問い合わせは迅速で、親しみやすいパートナーです。つまり、フロニウスは本当に信頼できる企業と言えます。フロニウスというオーストリアの溶接スペシャリストを選んだことにより、私たちは未来に安心して備えることができると確信しています。」